自閉症・発達障害のある方を支援する福祉施設を大阪・高槻で運営

メニュー
閉じる

第42回

ノースカロライナ州GHAを訪れて~障害と環境~

 


 以前、松上利男の一言「障害と個性」(18回)で、「『障害』は『環境のあり方』によって大きく変化するものですから、『障害』を『個性』という個人の問題にすり替えてしまうと、『障害』と『環境』、『社会』との関連性を切り離してしまうような感じが強くします」と書きました。
 「障害」を「暮らし難さ」と考えると、それぞれの障害特性を理解した上で、それぞれの障害のある人の暮らしやすい環境をどのように作り出すかという視点は、障害のある人たちに対する支援で非常に重要な事柄だと常々考えています。
 昨年12月に、強度行動障害を伴う自閉症者のグループホームでの地域生活支援を先駆的に取り組んでいるアメリカ・ノースカロライナ州アルバマーレに活動拠点のあるGHA(Group Homes for the Autistic,Inc)を訪れましたが、改めて「障害と環境」の関連性、すなわち「一人ひとりの障害のある人たちの障害特性の理解に基づき、暮らしやすい人も含めた環境をどのように作り出すか」という考え方を支援の基本に位置付けることの重要性を確認しました。
 GHAが運営するCarolina Farmsという農場の中にあるノースカロライナ州で最も行動障害が重い利用者2名が暮らしているグループホームでは、それぞれの障害特性に基づき、照明の明るさなど様々な環境の調整を行っていました。
 例えば、一人の利用者は絶えず壁に落書きをするという行動面の問題を抱えていました。しかし、本人の居室の壁に黒板用のペイントを塗ることで、容易に落書きを消すことができ、結果として、その行動が問題とならないというアプローチがなされていました。
 また、Duplex/Classroomという学校の教室を備えたグループホームがあり、以前入所施設の利用、公立学校に通学していたが、その人にあった支援が受けられずに行動障害を誘発した13歳から15歳の利用者が生活していました。
 この事例も本人の支援を中心に据えて、利用者が安心して教育を受け、暮らすことのできる環境を制度的に作り出していると言えます。
 今回、このように徹底して利用者一人ひとりに対する個別的評価と障害特性の理解に基づく、一人ひとりにとっての個別化した暮らし易い環境の調整と提供という支援の重要性をGHAの実践から深く学ぶことができました。
 「問題行動」を本人の問題と決め付け、そのような行動をとらざるを得ない本人の苦しさ、暮らし難さを理解することなく放置している支援者がいるとすれば、その行為はまさしく虐待であるという厳しい目で、日々の支援を振り返ることが私たち支援者に求められている資質であると思います。
 今回のGHAの視察を通して、改めて私ども法人における支援の実際を見つめ直す機会にしたいと思っています。

掲載日:2010年07月05日