法人開設10年を迎えてⅡ ~現場力を高める~
今年度、社会福祉法人北摂杉の子会が開設され10周年を迎えましたが、この10年間、私ども法人は、法人の理念「地域に生きる」を核としたビジョンを示し、そのビジョンに基づいて、「地域・一般化」、「広域・特化」という2つの競争戦略を柱として、法人経営を行ってきました。
競争戦略という言葉を使いましたが、戦略とは、法人としての「長期的な意思決定と方向づけ」であり、競争戦略とは、「他の法人との違い、他にはない独自性のある価値」という意味で使っています。
この競争戦略としての「地域・一般化」とは、高槻地域に暮らす障害のある人たちが地域の中で安心して豊かに暮らすことができるための必要とされる支援サービスの創造を目指すものであり、また「広域・特化」は、大阪府下で暮らしておられる発達障害のある人たちに対する一生涯にわたる包括的な支援サービスと連携モデルの創造と発信を目指すものです。
この私ども法人としてのビジョンと競争戦略に基づいた経営により、知的障害のある人たちへの支援サービスとして、入所施設、通所施設、生活支援事業、短期入所事業、ケアホームなど6事業、また発達障害のある人たちへの支援サービスとして、大阪府発達障がい支援センター、療育支援、就労支援など7事業の開設と運営を行うまでに法人の事業規模が大きくなりました。
現在、事業規模の拡大とともに、職員数は約180名となり、年間に約1,000名の利用者の方々の支援を行うようになりました。
この成果をもたらした要因として、明確なビジョンと、そのビジョンに基づく競争戦略が考えられますが、私は、いくらビジョンとそれに基づいた競争戦略が良くても、それを実現するオペレーション力、すなわち現場力が連動して機能しなければ、この成果を実現することはできなかったと思っています。
ですから、この10年間の法人としての大きな成果を生み出した原動力は、全職員の力(現場力)によるものであると確信しています。
そして、職員の働きに心から感謝しています。
しかし、今後のより質の高い経営を考えるとき、法人組織が大きくなればなる程、組織は官僚化していく傾向が一般的に強くなるという組織的なリスクをどの様に解決していくのかという視点と具体的な取り組みが必要になってくると思っています。
組織として重要なことは、法人としてのビジョンと競争戦略の実現に向けて、全ての職員が一丸となって、利用者満足度向上のために、様々な改善の取り組みやそのための提案が日常的に行われ、自由闊達な議論ができるフラットな組織風土を実現することにあると思っています。
しかしそのような組織風土作りの取り組みを怠り、官僚化が進むと、法人としてのビジョンとその価値の実現という組織的な働きよりも、自分自身が属する部署の都合を優先する傾向が広がってきます。
その結果、部署を越えた職員間のコミュニケーションが不足し、法人として必要な情報の共有化が後退して、組織としてのまとまりとパワーの喪失へとつながっていきます。
今年度、私ども法人は、その解決策の一つの試みとして、部署を越えた職員間のコミュニケーション促進のための取り組みを行っています。
具体的には、法人10周年記念事業の企画について、部署を越えた職員メンバーでの「企画委員会」の組織化や、4事業所の就労担当者で組織する「就労担当者会議」の実施、年4回実施する法人全体職員研修会についての各部署代表職員による企画検討、新規採用職員研修会の実施など、部署の壁を越えた意識的な職員間のコミュニケーションの充実に向けた取り組みです。
現場力であるオペレーション力の基本は組織力にありますが、その組織力を機能させるためには、職員間のコミュニケーションが重要な役割を果たすと思っています。
そして今後とも、私たちは、法人の今後の「目指すべきかたち」に向かって、更に現場力を磨き上げるための様々な試みを続けていきたいと思っています。
私は、現場力を磨き上げることの原点は、法人全体の組織的な力を利用者一人ひとりの夢の実現に注いでいくことであり、同時に、とことん利用者中心の支援の実現に繋がっていくものだと確信しています。