成長を促す刺激について
松上利男の一言「第21回 私自身への気づきの大切さ」の中でもお話しましたが、対人援助専門職としての私たちは、自分自身の身体を介して対人援助をしているのですから、支援者としての自分自身の価値観や考え方、感じ方が他者の内面に直接的に大きな影響を与えていることになります。
ですから、自分という存在が他者に対してどのような影響を与えているかということを常に感じ取ることのできうる研ぎ澄まされた感性を得るために、私たち自身の感性を磨き上げる努力が必要となります。
その重要な点が「自分自身への気づき」です。
前回、その方法の一つとして、「パワー日記」のお話しをしましたが、今回は「人間の成長を促す刺激や条件」について考えてみたいと思います。
先ず、あなた自身の人生を振り返ってみて、特に小学校や中学校の最も成長の著しい時代を振り返って見られると、あなたに対する家族や学校の先生、友達からのあのときのこんな働きかけが自分自身の成長に大きく影響したということがいくつも思い当たると思います。
このようにあなた自身の人生への振り返りを通して、成長を促す刺激についての「自分自身への気づき」を得ることもできます。
また日常見られる風景の中で、「成長を促す刺激」についての気づきを得ることもできます。
例えば、小さな子どもをサポートしているお母さんの行動をよく観察してみると、多くの気づきと学びを得ることができます。
子どもが滑り台に挑戦している光景を思い浮かべてください。
子どもは初めての体験で不安がっています。お母さんは、「だいじょうぶ!だいじょうぶ!」と子どもに声をかけながら、子どもが滑り台の階段を登るように励まします。
そして、子どもが階段から転げ落ちないように、子どもの後ろに立って、手で子どもの体をガードしながら、「すごいね!もう少し!もう少し!わー登れたね!」と子どもの気持ちを言葉で表現し、精一杯子どもの行動を褒めます。
今度は滑り台の上から滑り降りるのを子どもの体を手でガードして、「怖くないよ!お母さんがちゃんと支えているからね!」と子どもの恐怖心を取り除き、リラックスさせるように働きかけます。
そして、子どもが滑り始めると、滑り台の前でお母さんが子どもを待ち受けて、滑ってきた子どもを受け止めて、「やった!えらいね!」と最大限に子どもを褒めて、子どもに自信を与え、もう一回挑戦しようとする子どものモチベーションを高める関わりをします。
このようなお母さんの子どもへの関わり方を見ていると、全てのお母さんが発達心理学を学んだわけでもないのに、自然に子どもの成長を促す関わりをしていることに気づかされます。
また私たちは、お母さんの子どもへの関わりから多くのことを学ぶことができます。
これは、私たちの人類という遺伝子の中に、すでに組み込まれた育児本能が引き継がれてきている結果としてある行動なのでしょう。
もし、お母さんが子どもと遊んでいる光景に出会う機会がありましたら、是非じっくりとお母さんの行動を観察してみてください。多くの学びと気づきが得られるチャンスになると思います。