自閉症・発達障害のある方を支援する福祉施設を大阪・高槻で運営

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第72回

障がいのある人たちのディーセントワークについて③

 

 

 私が知的障がい者の通所授産施設で働き始めて、私の考え方に大きな影響を与えてくださったのは、信楽学園の園長、信楽青年寮の寮長をされていた池田太郎先生です。私が障がいのある人のディーセントワークを考える時に、池田先生の実践がかなり影響したと思っています。

 

 当時、信楽青年寮の寮長をされていた池田先生を何度かお訪ねしましたけれども、その時に色んなお話を聞きかせていただきました。その中の1つに、「松上さん、生き物はやめときや。」っていうお話を聞かせていただいたこともあります。なぜかと言いますと、近江学園におられた時に養豚が儲かるという話を聞いて、北海道から貨車1台分の子豚を買って、ご利用者の仕事として飼育されたそうです。しかし、福祉の人達はビジネスを知らないので、豚を買って飼育を始めた段階ですでに豚肉が値下がりしている状況だったそうです。そんな状況でも生き物ですので餌は与えないといけないし、それから病気になる豚もいたり…池田先生も「病気の豚と一緒に寝たで。」などとおっしゃっていました。

池田先生に、「そやから、生き物やめときや。くれぐれもやめや。」と教えていただいたのですが、その教訓を忘れて、ミミズやタニシの養殖をして失敗した経験もしました。

 

 池田先生は、まだ20代という若い私が訪れた時にも夜遅くまで付き合ってくださいました。

池田先生からお話をお伺いした翌朝、池田先生が来られて、「松上さん、今から信楽学園に案内するわ。私の実践を理解するには、信楽学園を見てもらわんとダメや。」ということで、池田先生が軽トラックを運転されて、設楽学園に連れて行っていただきました。

 

 池田先生は、設楽学園で、生産工場方式っていう考え方に基づいた支援を実践されていました。障がいの重い人達にもそれぞれが得意な事や強みがあるわけですから、そういう人達も含めて、1つのラインを作って仕事をするというお考えでした。信楽学園は窯業が盛んな信楽の土地にありますから、粘土を掘り出すことから始めて、掘り出した粘土を土練機で粘土を練って、それを成形して、器にして焼いて、出来たものを出荷するという一連の作業工程に様々な障がいのある人たちが関わっておられました。一つの物を作るという生産工程の中に様々な障がいのある人たちそれぞれの強みを活かして、協働して製品を作り出すことに価値ある支援であると実践されておられたのです。

 

 今のJRが国鉄と言われていた時代にお茶を入れるための”汽車土瓶”という物を作っておられました。今はペットボトル、その前はプラスチックの容器で土瓶の形をしていたのですが、その前は陶器で作ったお茶の入れ物でした。それを”汽車土瓶”というのです。それを信楽学園で作っていたわけです。その様に社会の中で使われている。それも国鉄の駅で汽車土瓶が売られていました。その様な社会とかかわる仕事を作り出しておられました。

 池田先生は、「みんなで作ったら最後に信楽学園という名前の入った段ボールに詰めた製品をトラックにみんなで積み込んで、みんなで送り出すんや。それが大切なんや。」とおっしゃっていました。

 

 それぞれができることを担っていくという実践をうかがい、その後、重い障がいのある人を含めたグループ就労の実践を試みてきました。グループ就労を通して、仕事の中で役割を担う、仕事を通じて社会に参加するというディーセントワークの基本的な考え方を池田先生の実践を通して学ばせていただきました。

 

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掲載日:2022年12月06日